私はふつうのひとなので

今のソフトウェアエンジニアリングはふつうの人に辛すぎる。ここで言う「ふつうのひと」とは、たとえば「基本的に自分で本を買わない」「就業時間以外はプログラムを書かない」ようなひとだ。

自分で本を買って読むのはよいことだ。就業時間以外にコードを書くのもよいことだ。しかし、それは個人のたのしみのために行われるべきものであって、職業上の義務としてなされるべきものではない。それでは単なる時間外労働である。

業務のために、就業時間外にたくさん本を読め、と説く人々は、時間外労働を対価なしに(むしろ本代を払って)行え、と説いていることに他ならないはずだ。これを問題だと思わないのだろうか。私は非常に重大な問題だと思う。そのような行動をとらなければキャリアに支障を来たすというなら、それは業界そのものが深く病んでいるとしか思えない。

 企業の志についてどうあるべきかは考えがまとまらないけれど、技術者個人個人のありかたとして、自分がこの業界で働いてきていつも思っている後ろめたさを少しだけ解消してくれるような気がしたエントリだ。

 プログラマーやSEをただ食べるだけのものと思っている僕にとって「技術者たるもの就業時間外であっても勉強すべき」というのは苦しい意見であり、そういう文面を見ては自分がこの業界に向いていないのではと思ってしまうことが多かった。一ヶ月に使える書籍代はほとんど自分の趣味のために使われてしまい、技術書を買うことはめったにない。家でサーバも作ってないし、プログラムといえばどこかの誰かが作ったものを、手段として利用する程度だ。

 もちろんまったく興味がないわけではないからこそ、なんとかやって来てはいる。しかし、就業時間外にも技術に対して貪欲であることを、まるで義務のように語られる発言を聞きながら、後ろめたさをいつも感じてしまうのだった。職業として自分ができるもののひとつとして選んだのに過ぎないので、業界のほうからそんなやつはいらないと言われればそういうものなのかなと思うしかないのだけれど。すいませんすいません。